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少年とピザ

元旦の1日を家族で僕の実家で過ごした後の、底冷えのする夜のことだった。
ほとんど車が走っていない、とある住宅街の細い十字路で車を一旦停止し、
左前方から来る車をやりすごしながらFMの曲に合わせて鼻歌を歌っていると
後方からドン!という音が聞こえたような気がした。

次の瞬間、カミさんが「バイクがぶつかった!」と叫んでいる。
あまり衝撃を感じなかったためよく分からなかったのだが、後ろを振り返ると
ピザ屋の配達の少年が必死に倒れたバイクを起こそうとしている。
一体どうなったのか、とりあえず車から降りて様子を見に行くと
どうやら停止しているボクの車に、そのまま突っ込んでしまったらしい。
暗がりのなか顔をよく見れば、まだあどけなさが残る17歳くらいの金髪の少年だった。
きっとあまりにも寒くて、そして風が冷たくて、うつむき加減でバイクを運転していたんだと思う。
ボクも昔はずっと原付に乗っていたので、真冬のバイクの辛さがよく分かる。

とりあえず声をかけてみた。「大丈夫!?」
すると「はい、ボクは大丈夫です。すみません。それよりも大丈夫でしたか?」と
こっちの方を心配しながら、衝突した箇所をわざわざ教えてくれた。
確かにバンパーに傷がついて、ちょっとヘコンでいる。でも全然大したことはない。
一方、ピザ屋のバイクは前方のフェンダー部分がバキバキに割れていた。

ボクの車は中古車だし、傷なんてもともと気にしない性格なので、
ちょっとブツかった程度で修理代が欲しいとかは微塵も思わなかったけど、
後々トラブルになることを防ぐため、とりあえずは警察に連絡しておくのがよいかなと思い、彼に確認した。
ところが、「あの・・・それは・・・」と困っている。
ボクはちょっと悩んだ末、「もういいか。怪我もなかったようだし。」と連絡はしないことにした。
元旦の夜までバイトをしている少年を、それ以上責めることができようか。

そのとき彼は思い出したように、バイクの後ろに積んでいたピザケースを取り出し、
配達途中だった中身を確認した。「あぁ・・・。」
一度ひっくり返っているため、ピザはカタチが崩れてぐちゃぐちゃになっていた。
「それはもうしょうがないよ。」
声をかけると、少年は力なく笑った。
そして「じゃ、気をつけてな。店長には上手くごまかして。」と、ボクらはその場を離れた。

今から思うとあの出来事は、最近自分も車の運転が少々適当になっていたので
そろそろ気をつけなさいよという、天からのお告げの意味もあったのかもしれない。
彼は店に戻ってから何と言い訳したのだろう。


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