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長い年月を越えて

去年の夏に会社員生活をリタイアした親父と、
梅田で待ち合わせをして晩飯を食べに行った。

現れた親父は髭面にハンチング帽、
そして真っ赤なセーターとジーンズという出で立ちでちょっとビックリした。
正月に実家に寄ったときは髭なんて生やしていなかったし、
そもそも今までの人生で、親父の髭面そのものを見たのが初めてだった。

若い頃から服をよく買っていたのは知っているけど、
近所以外へ出かけるときはこんなにお洒落だったのかと驚くと同時に、
自分の父親がいつまでも老け込まずにいるという事実に嬉しくなった。

実はボクは昔から親父とはあまりしっくりいったことがない。
高校1年の頃から物凄い反抗期が始まり、大学を卒業する頃まで
ほとんど会話らしい会話をした記憶がない。
実直で真面目なサラリーマンであった親父と、
とことんグレてフラフラしていたボクとの間には何の接点もなく、
口を開けば常に喧嘩という酷い関係だった。

それでも、ボクも子どもが生まれてからは、よく実家に寄るようになり
さすがに孫を介すると、お互い大人なんだし、それまでのわだかまりも徐々に氷解していった。
ただし腹を割って話し合うというところまでは、どうしても辿りつかない。
なにしろ物事の考え方や、価値観があまりにも違いすぎるのだ。

しかし今回は違った。
どうせまたいつもの保守的な物言いで否定されるんだろうなと思いながらも、
飲みながら自分が近い将来、ある商売を始めるつもりだと口にしたら
意外にもその話に共感してくれて、親父自身の本当にやりたかったことや
小さいころに母親、つまりはボクの祖母が天下茶屋で喫茶店を営んでいたこと、
さらにはその後、お初天神でバーを開いていたことなど、初めて耳にする驚きの事実をいろいろと話してくれた。
その話しぶりからは、きっと様々な波乱や葛藤、叶わぬ思いがあったんだろうなということが推測され、
なんか生まれて初めて親父と分かり合えたような気がした。
嬉しかった。忘れえぬ一日となった。

親父とボクの間に、あとどれくらい時間が残されているのかは分からない。
けどこれからは、もっともっと話をしようと思った。とはいえ酒の力はまだいるかな。


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