ごくたまに純愛もの、しかもある程度齢を重ねた男女が主人公の小説を猛烈に読みたくなる時がある。しかし本屋に並んでいるのは俗物的なもの、スタイリッシュなものなど、なかなか調度良い加減のものが見つからない。自分が読みたいのは本作のような、人間の心のヒダが微妙に揺れ動く様を、限りなく繊細なタッチで描いた物語なのだ。時に燃え上がるような色彩をみせる、移ろいゆく田舎の四季との対比がまた美しい。