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凛とした空気、忘れえぬ光景

2004.10.03

大崎善生 / よしもとばなな / 帚木蓬生

大崎善生
大崎善生
" 九月の四分の一"

十月に入り、さすがに空気も凛としてくると、汚れきったこの自分でさえ、清冽な心を取り戻せるような気がする時がある。今となってはそれはもう幻にしかすぎないのだが、かつてそこにあったはずの、甘くほろ苦い想い出や出来事が、止め処なく記憶の流れからこぼれ落ちては、秋の空の彼方へ消えてゆく。心にひっそりと、そんな静かな余韻を残さずにはいられない短編集。
よしもとばなな
よしもとばなな
"デッドエンドの思い出"
人は『幸せ』って言うと何を思いうかべるか、と彼女に聞かれた彼は、ドラえもんとのび太のふたりの関係性を例にあげ、「あれが僕の理想の光景なの。ふすまの前で、ふたりともざぶとんに寝転がって、いっしょにどらやきを食べながら、マンガを読んでいるでしょ?」と言う。普遍的な中流の日常の中にある、小さくても最高の幸せのカタチを淡々と描いた短編集。装丁も素晴らしい。
帚木蓬生
帚木蓬生
"空夜"

ごくたまに純愛もの、しかもある程度齢を重ねた男女が主人公の小説を猛烈に読みたくなる時がある。しかし本屋に並んでいるのは俗物的なもの、スタイリッシュなものなど、なかなか調度良い加減のものが見つからない。自分が読みたいのは本作のような、人間の心のヒダが微妙に揺れ動く様を、限りなく繊細なタッチで描いた物語なのだ。時に燃え上がるような色彩をみせる、移ろいゆく田舎の四季との対比がまた美しい。

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