東京の下町、月島や佃に住んでみたい。奥に行けば行くほどに、まるで水がしみこんでいくかのような風情と郷愁を感じさせる路地。時間が永遠に止まったままの界隈では、今なお古き懐かしき生活感が、濃密なまでに残っている。入り組んだ路地に格子戸、鉢植え、バケツにゴムホース。同じような風景は以前、尼崎にも多く見られたが最近急速に姿を消しつつある。
青山の表参道沿いに並んで建っている古くてかっこいいアパート、同潤会アパートトメントといえばそれしか知らない人が圧倒的に多い。しかし「東洋一」を掲げて作られた江戸川アパートメントこそが、同潤会という組織の活動の結晶だった。中庭を囲むように作られた個々の和室洋室、共同風呂、食堂、社交室、そして床屋までもを兼ね備えた昭和モダンの集合住宅には、今では考えられないような共同体が形成されていた。
のどかな地方はもう幻想でしかないらしい。山のなか、田んぼのなかに突如あらわれる大型ショッピングセンター。人々はその広大な敷地の駐車場に吸い込まれていき、昔ながらの商店街はシャッター通りと化す。豊かさと便利さだけを求め、街も自然もただスクラップされるだけの現実がそこにはある。特にここ10年ほどの地方における犯罪発生率の増大についての考察が興味深い。