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かなり前からあちこちの本屋で平積みされていて、帯には『本屋さんも泣いた!奇蹟と感動の物語』と恥ずかしくなるようなコピーが書いてある。自分はこの手の『泣ける』系コピーが大嫌いなのでまず買わない。どこをどう読んで泣けるのよ?的な作品に限ってこういった帯が付いていることがあまりにも多い。浅田次郎の「鉄道員(ぽっぽや)」などが最たる例だと思うが。
ところが。いつも行く図書館でも見かけたので、とりあえずどんなものかと借りて読んでみると、不覚にもホロリときてしまった。焼酎をかなり飲んでいて酔っていたからなのだろうかと、再度読み返したのだが、やはりジワリとくるものがある。もう一つ収録されている「竜二」という話もよい。ただし『泣ける物話』という表現はちょっと安易すぎる表現のような気がした。
これは喪失感やノスタルジーなどという言葉がピッタリくるのだろうか。登場人物達が交わす言葉の一つ一つや、視線の先に見えている風景が、かつては自分も同じように感じて持ちえたもの、そしていつの頃からか無くしてしまったものを、否が応でも喚起させるのだ。ある一定の年齢を超えた大人にとっては間違いなく共感できる何かが、この人の書く作品にはある。(「青空のルーレット」も読んでみたが、これがまたホロリとくる傑作!)
何一つ難しい表現や言葉は使われておらず、どちらかといえば平易な文章。さらに設定も分かりやすすぎるともいえる作品である。大学生活最後の夏期休暇に自転車旅行をしていた「僕」が、さびれた国道沿いにあるドライブインで過ごしたひと夏の出来事。そこのマスターでもあるセイジは、ちょっと世捨て人的な雰囲気をもった青年だった。物語はここからスタートする。
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