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関西弁で「どつぼ」という言葉がある。これは元々は「肥溜め」のことをさすのであるが、「どつぼにハマってしもうた」「あぁもうどつぼや」といえば、のっぴきならぬシャレにならない状況に陥ってしまったことを言う。ただ、自分の不幸さえ滑稽に表現してしまうという、関西人のメンタリティーそのままのこの言葉には陰惨なトーンはない。むしろ「ホンマえらいこっちゃのう」と軽く切り替えしてあげるのがまた礼儀である。
九州から上京し2年目の夏を迎えた大学生・川尻笙は、突然訪れた父より、30年以上前に失踪した伯母・松子の存在と、そして彼女が最近何者かに殺されたということを知る。そして何となく事件を調べていくうちに、彼は次第に松子の生涯に興味を持ち始めるのだが、次々と明らかになる驚愕の事実。そう、ただの平凡な大学生である彼にとって、松子の人生はあまりにも凄まじすぎた。
ドツボ生産マシーンか?と思えるほど次々と不幸に出くわす松子の一生。しかも並の不幸ではない。清廉な一教師として始まった彼女の人生であったが、あまりにも物事が全てに自分の意思とは真逆の悪い方へと傾ていき、どこまでも転落していく様は、もう「どつぼ」を通り越してそのまま日本を一周してきたかのような神々しさすら感じる。
この物語は現在に生きる笙と、過去に生きた松子の2つの視点から語られており、そこに30年の時空を結ぶこれまた不幸な登場人物が複雑に絡み合って、より運命的でドラマティックなものになっている。中谷美紀主演で映画化が決定と聞いて、あぁなるほどと思えるほど、ビジュアル化しやすい「えぇ?そんな!」「次はどうなるの?」的な展開の連続は非常に読みやすかった。ただしエンディングに、若干の後味の悪さが残ったが。
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