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タイトルと装丁が、自分へ向けて強烈に訴えてくる本が時々ある。本屋に平積みされている新刊の、その挑戦的なタイトルに、そして咆哮する真っ黒な犬の写真に目が釘付けになった。これは絶対に買わねばならぬと直感して、古川日出男の作品は読んだことがなかったが、ろくに中も確認せずレジに向かう。
久しぶりに読み終えるのにたっぷりと時間がかかった。年がら年中、書籍を読んでいる自分は、文字を追うスピードもかなり早い方だという自負があったのだが、この作品はそうはいかなかった。書き出しから最後まで徹底的に硬質、且つ、ブツ切りの文体で書かれており、しかも一行ごとにしっかり頭に叩き込んでいかなかれば、シーンの展開と、戦争の歴史の中において犬たちが世代交代してゆく様が、あっという間に訳が分からなくなってしまう。
物語は1943年、北洋・アリューシャン列島から撤退した日本軍が、4頭の軍用犬を置きざりにするところから始まる。犬たちは繁殖と交配を繰り返し、代は変われども高度に訓練された軍用犬として、舞台は旧ソ連を軸に、アメリカ・メキシコ・中国・ベトナム・ハワイ・アラスカなど戦地を転々とする。それぞれの時代を生きた犬の視点が、近代50年間における戦争の歴史と交錯しリンクしていく。
凍りついたシベリアの大地で繰り広げられる銃撃戦の真っ只中に居るような緊張感。それは最後まで止むことなくこの作品中に溢れており、甘っちょろい叙情性は皆無である。なかなか出会うことの無いヘビーな作品に嬉しくなる一方、読み終える頃には軽い疲労感を憶えたのも事実だが、傑作であることは間違いない。直木賞候補作品。
1960年8月、スプートニク5号に乗った二頭の犬が宇宙から帰還した。それぞれの名前は、雄犬がベルカで、雌犬がストレイルカだった。 (中略)イヌよ、イヌよ、お前たちはどこにいる?
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