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今は手に入らないがどうしても忘れられない漫画がある。ずっと、いましろたかしの漫画がそうだった。地元の友人の部屋で連日連夜、徹マンに明け暮れていた20歳前後の頃、メンバーは常に4人以上いるのだが麻雀卓は一つしかない。当然、誰かが余ってしまうので、前回2着の奴は抜け番と決めていた。抜け番になると小一時間は暇なので、TVを見たり、ギターを弾いたり、誰かの外馬にのったり(誰が勝つかを外から賭けること)、その辺に転がっている既に読み飽きた漫画やBURRN!などを、寝転がってしょうがなしに読んだりしていた。
山積みのジャンプやプレイボーイなどに混じって、誰が買ってきたのか、ひょっとしたら自分だったかもしれないが、いましろたかしの「ハーツ&マインズ」はあった。タバコの煙で白くモウモウと曇った部屋の中、「うぉぉぉ、ツモじゃ〜!」とか叫んでいる卓の横で、抜け番の奴は誰もが何度読んでも、「クククッ・・・」と気色悪く笑っていた。
いましろたかしの漫画、それはディープなブルースであり、煩悩の果ての焼け付くような焦燥感であり、何もかもを飲み込むブラックホールであり、そしてまさに今(リアル)であった。強烈なインパクトを受けた登場人物については、30を過ぎても時々ふっと思い出すことがあり、「ジャスティに生きろよ」などと山下兄弟の台詞を訳も無く心の中で呟いては、あぁまた読みたいな〜と思うことがあった。(長い間、廃刊になっていた)
そして3年前、10余年の時を超えて遂にその単行本たちが分厚い1冊の「初期のいましろたかし」として復刻した。当時は何といっても笑いの面が強かった印象があったのだが、この歳になって改めて読み返してみると、全然笑えない部分も多いことに気づかされる。名作はいつ読んでもまたリアルということか。復刻にあたって寄せられた、錚々たる面子のコメントの数々にちょっと嬉しくなった。特に「いましろさんの描く登場人物は、あの頃のボクそのものでした」という松尾スズキのコメントはよく分かる気がする。
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