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音楽っていいな。今まで何万回と思うことはあったが、最近とみにそう感じる。いつの時代にもカッコいい新人バンドは新鮮な興奮と感動をもって次々と現れるし、昔聴いたアルバムは時を越えてもあのときの感受性と風景を、瞬時に思い起こさせてくれる。iPodのお陰もある。そしてさらには、これだけ山のように聴きあさっても、まだ自分が耳にしたことのない音は、汲んでも汲んでも枯れない泉のように果てることなく存在する。
隣駅のTSUTAYAで発見したSIONのベストアルバム。初期のレコードは何枚も持っているのだが、10年以上プレイヤーが故障したままなので長いこと聴けずにいた。CDを借りてきた夜、家族で晩飯を食べた後、カミさんは台所で洗いもの、息子は炬燵で塾の宿題、その横で自分はノートPCを広げiPodへデータ転送する前に、とりあえずヘッドフォンをして再生する。一曲目、『俺の声』のイントロが流れて歌が始まった瞬間、懐かしさに胸が熱くなった。あの頃この曲を一体何回聴いたのだろう。
高校を出たての19のとき、進学校にいたにもかかわらず大学受験をほとんど放棄同然で卒業した自分は、毎日ただバイトに明け暮れていた。先のことは何ひとつ見えず、葛藤と不安がごちゃ混ぜになって訳が分からなくなっていた当時、ウィラードやSION、ガスタンクなどの日本のインディーシーンからメジャーに浮上にしてきたアーティスト達に夢中になった。今まで聴いてきた洋楽とは明らかに異なる、彼らの強烈なまでの出で立ちとヒリヒリとした音楽。まるで異次元からやって来た救世主のように思えた。
中でも特に、SIONの痛々しいまでの歌声とシャイで哀しい歌詞は、そんな状況の中でもがき苦しんでいたところに一筋の希望の光を与えてくれた。ちょうど失恋の痛手も重なって、焼けクソのボロボロになっていた自分は、誰よりも絶望の味を知っているであろう彼の曲の中に、今となっては勘違い甚だしいのだが、己の姿を重ね合わせたりしていた。まあ誰でも似たような経験を持っているであろう、言ってみればよくある青春の一コマか。
しかしSIONといい早川義夫といい、こんなにも素晴らしい歌手たちが、いまだに世間一般であまり認知されていないのは残念でしょうがない。SIONは今年デビュー20周年。6月には驚いたことに、彼のことを敬愛して止まない福山雅治とカップリングシングルをリリースした。きっかけは何でもいい、若い人たちにもSIONの歌に触れてほしいな。
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