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女性ならではの、心の機微

2006.04.01

日向蓬 / 松井雪子 / 荒木陽子

日向蓬、角田光代、有川浩ほか
日向蓬、角田光代、有川浩ほか
"Sweet Blue Age"

7人の作家によるオムニバス。この中にとりわけ美しい青春の物語、日向蓬の「涙の匂い」があった。東北の田舎の中学校へと転校した理恵子は、地域でのスローな暮らしやクラスの空気に、何だかなぁと感じながらも徐々に馴染んでゆく。そしていつからか、まったく勉強は出来ないが悲しいほどに純朴で、クラスの誰よりもコークスストーブに火をつけるのが上手なタモツという少年が気になりだした。放課後、校庭に積もった雪を太陽が照らす中、背の高い彼が走る姿にドキドキする描写が、本当にもう忘れがたく良い。

松井雪子
松井雪子
"刺繍天国"

ミシンの腕前は天下一品、名付けたあだ名はマシンガンコージ。着ぐるみを制作する会社で毎日ミシンの音に包まれながら、斜め前に座る中途入社のコージ君に恋をした。調子が良いときはペダルの踏み加減でそのリズムが音楽になるといい、彼はそれをミシン天国(トランス)と呼んだ。私はいつか彼と恋人になることを夢見ながら、今日もアパートの部屋をせっせと模様替えする。そしてとっておきの秘密兵器は元カレと使っていたイタリア製のエスプレッソマシーン。「うちで一杯やっていかない?」今度こそ勇気を出して誘ってみるのだ。

荒木陽子

荒木陽子
"愛情生活"

写真家・荒木経惟の亡き妻・陽子さん。類い希なる才能と特異な思考回路を持ったアラーキーとの生活に、何を思い何を感じていたのか。電通社内での出会いから始まった非日常すれすれの、それでいて深く真っ直ぐな愛情生活。料理のことから、お酒、映画、写真、そしてエロティシズムの果てまでが、赤裸々に綴られている。月並みな言い方ではあるが何て素敵なカップルなのだろう。お互いに無二の相手として夫婦でありながら、いつまでも男性と女性であり続けた。まさに彼女の存在があったからこそのアラーキーだった。ぜひ東京日和と併せて。

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