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バラバラになる前に僕たちは

2008.04.29

久保寺健彦 / みなさん、さようなら

久保寺健彦
久保寺健彦
"みなさん、さようなら"

照井啓太,長谷聰
照井啓太,長谷聰
"団地ノ記憶"


団地日和
団地日和

今、密かに団地ブームだそうだ。郷愁を誘う古い団地を見つけは嬉々として撮影する若者をはじめ、建築家・都市計画家・自治体職員・歴史家から映画監督まで、団地ファンは幅広く存在し、「団地萌え」なる言葉もあるらしい。確かに大型書店に行くと、団地の写真集を最近よく目にする。そういう僕も実は結構好きなので、阿佐ヶ谷団地など凄くいいなぁと思ったりする。

「一生団地で暮らしたい」。この本は、小学校の卒業式で起きたある事件がトラウマとなり、団地の敷地より外に出られなくなった渡会悟という少年の話である。彼は団地という限られた狭い世界の中だけで生きていこうと決心し、そこで友達を作り、身体を鍛え、仕事を始め、恋をする。しかし小学校を卒業した当時107人いた同級生は、やがて月日が経つにつれて一人また一人と団地から旅立っていく。

コミセン(集会所)で仲良くなった引きこもりのいじめられっ子、薗田くん。隣に住む幼馴染みであり、早熟で大胆な松島さん。団地内でケーキ屋「タイジロンヌ」を営む師匠。登場人物がそれぞれ魅力的で、またそこで交わされる会話は明るくヘンでありながらも、いずれ離ればなれになるのを誰もが分かっているかのような切なさに溢れていて、胸がキュンとなる。

現代に共同体などもうどこにもないのは分かっているが、それでも人はみな心のどこかで、僅かでもいいから誰かと繋がっていたいと考える。「あぁ、ずっとこれが続けばいいのにな・・・」というような、今はもう無くしてしまったであろう儚くあやふやな感情が、以前は確かにあった。そんな感情を思い起こさせる物語に激しく心を揺さぶられる。日々孤独と葛藤に苛まれながらも成長していくこの少年のように、僕らも大人になったのか。

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