マカロニ惑星
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歌は歌のないところから聴こえてくる

2006.08.26
木曜日、待ちに待った早川義夫氏のライブ。17時半過ぎに仕事場近くの定食屋でラーメンを食べ、会場の梅田シャングリラへ向かう。オープンしてまだ一年というこのライブハウスは、ケバケバしい外観とは裏腹に、薄暗い中はミラーボールと大きなシャンデリア、ステージ奥の深紅の垂れ幕が何ともしっとりとした雰囲気を醸し出している。ビールを飲みながら椅子に座り、前回と同じくOnce Upon Time in Americaのサントラが流れる中、対バンの枡本航太という人の前座を待つ。写真を見るかぎり、ノイズ・アヴァンギャルド系のような気がしていて、実はとっても楽しみだった。

19時から15分ほど押してSEがムーン・リバーに変わり、タンクトップにボロボロのジーンズ姿の痩せた青年が現れる。枡本航太の登場。果たしてどんな音を出すのだろうか。まずは椅子に座り、白いストラトを弾き出す。ドゥルッティ・コラムを彷彿させる透明感溢れるコードワークに、激しいカッティングのインスト。うわっ、かなりいいかもしれない。続いてはサンプラーを駆使してのコラージュ&マシンビートに、ファズギターをかきならす一人爆裂ノイズ大会。最高だ。曲が終わるたびに発する「サンキュ!」という屈託のない声に、毎回客席から笑いが沸き起こる。

そして、次のピアニカによるインストに心底驚かされる。あんなちっぽけな楽器から鳴らされるその音の広がりときたらもう、なんてこった。この男は紛れもなく天才だ。さらに圧巻はピアノの弾き語り。欧州現代音楽風の伴奏にビブラードのかかった震える声、そして嵐のような人間リズムボックス。胸がいっぱいになる。とどめはスパニッシュ風のアコースティックギター。が、なんともう一時間半近く演奏している。ステージ横のスタッフから注意が促され、やむなく最後はワンコーラスだけ唄いあげ、名残惜しそうに彼は去っていった。こんなにも嬉しい発見があった今夜のブッキングに感謝。

束の間の休憩時、バーに焼酎があったのでまたも飲む。やっぱり小さなライブハウスはいいな、天井のシャンデリアを見上げながら思った。そしていよいよ早川義夫+HONZIのライブが始まった。いきなりの『サルビアの花』に心を鷲掴みにされる。前回のソロライブが夜に揺れる燭台の炎のごとく、どこか張りつめたものがあったとしたら、今回のライブはHONZIさんの奏でるバイオリンとの絡みもあり、ポワっと赤く灯されたオイルランプのような印象だ。濃密であると同時に、あたたかかった。

何度でも来たい、何度でも聴きたい。またしても『パパ』の途中で涙腺が緩む。親子ほど歳の離れた男女の哀しく美しい愛の物語、僕はこの曲が死ぬほど好きなのだ。少し酔っていたせいもあるかもしれないが、曲が終わったとき失礼とは思いつつも、「ヨシオ〜ッ!」とステージに向かい叫んでしまった。叫ばずにはいられなかった。心なしか早川氏は少しだけ笑ってくれたように見えた。ホっとした。

続く、『躁と鬱の間で』『猫のミータン 』『父さんへの手紙 』などの名曲群を聴きながら、耳の奥の方でハッキリと感じたことがあった。そうなのだ。自分は音楽がたまらなく好きです。この狭い空間が好きです。そして、一度も話をしたこともないけれど、今こうやって自分と同じようにひとりでやって来たここにいる人たちが好きです、と。彼の歌を聴いたからこそ素直にそう思えた。いやはや素晴らしく幸福に包まれた一日だった。

  シャングリラのシャンデリア。すごくいいです。また行きます。  
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