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夢ではなかった卵かけご飯屋

2008.03.09

子供の頃、近所の商店街に「たまご屋さん」と呼ばれる店があった。小さな鶏肉屋の横で文字通り卵のみを売っていて、おが屑がいっぱい入った店頭の木箱には、卵がいくつも無造作に転がっている。木箱ごとに、白くて安い卵から赤くて高い卵まで値段が分けられており、客はそこから買いたい個数だけ卵を拾い上げて、1個何円かで買っていくのである。小さい頃の記憶なので、どうやって割れないように包んでもらっていたのかまでは憶えていない。

粗末で薄暗い店内には裸電球がぶら下がっていて、店のおっちゃんはよくその電球に卵をかざして見ていた。大人になってから知ったのだが、あれは血卵(血が混ざった卵)かどうかを調べているらしい。今はもう卵といえば、スーパーでパックに入ったものしか見かけないが、昔はどこの商店街でもこんな風に売られていたのだ。で、なぜだかその卵屋の夢をもう彼此20年も前から何度も何度も見る。大抵、腹をすかして寝ているときなのだが。

思い出と違い、夢の中では決まってその店の奥に、長テーブルが一つある6畳間の小汚い座敷が用意してあり、その上には籠にいくつも盛られた生卵がポーンと無造作に置いてある。そして客はそこで白飯に、生卵をかけて食べていくのである。一人数百円で卵は食べ放題、いわばセルフの卵かけご飯屋さん。むろん夢の中だけの話であって、それは自分が食べたいという欲望なのか、それともこんな珍しい商売をしたらきっと儲かるというアイデアなのかは分からない。とにかくもう、当時あの店の奥では実はそのような商売を別途やっていたのだと錯覚するほどリアルな夢なのだ。

しかし!最近知ったのだが、卵かけご飯屋さんは実在した。場所はここ尼崎と同じく兵庫県、といってもかなり北部の豊岡市で、店の名は『但熊』という。近頃は雑誌で取り上げられることも多く、県外からの客などで連日かなり賑わっているらしい。写真を見ると、おお!まさしくこれは夢の中の卵かけご飯屋と同じシステム!もちろん夢と違って、店内は清潔で奇麗だし、メニューも他にあるみたいだが、自分が考えていたのはまさにこんな感じなのだ。やられた〜オレのアイデアだよそれ!借金してでも自分が一番にオープンするべきだったのか?まぁ何しても一度は行ってみたいです。

 

雑誌「BRUTUS」の最新号より。いやしかしホント美味しそうに撮るねぇ。

 
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